お酒造りに没頭する酒職人の女性の仕事観

私の仕事は「酒を造る」こと。
酒とは日本酒のことです。
とにかく酒造りに憧れてこの世界に入り、今日まで、無我夢中でただただ「酒」を造り続けています。

この仕事の好きなところは、良くも悪くも結果がはっきり出るということです。
大手ブランドの様な名前だけで売れるようなメーカーでは無い為、時代に合わせた味、言い換えれば「飲みやすい酒」を造ることが常に求められるのです。
しかし、僻みっぽく聞こえますが大手には大手の凄さ、それは「いつでも」均一な味を造れることを分かっている上の発言です。
当たり前ですが、いつ飲んでも味がブレない、その為の製造管理設備がある・・それは凄い事なのです。

私達の様な小さな製造元が大手を相手に戦う酒を造る場合、ひとつの目標とするのは毎春に行われる「全国新酒鑑評会」で賞を貰う事です。
所謂「大吟醸」を全国の各蔵元が持ち寄り競う訳です。
鑑評会だけに目標を合わせた酒造り、そこには設備や蔵のブランドも関係無い、全国の皆が同じ土俵で戦う事が出来る戦場です。
それは私達「蔵人」にとって最もやりがいを感じる瞬間です。
寝る間を惜しんで麹の世話、醪の管理。この瞬間は「仕事」であることを忘れてしまいます。とにかく美味い酒が造りたい。
そして、できた「大吟醸酒」。これが過去の出来を更新出来たと自負できた時、この仕事においての「やりがい」を感じます。
お客様が美味いと思い、売れる酒と私達蔵人が美味いと思う酒は違います。
私達にとっては、言い方は悪いですが、マイナスの味(例えば劣化している時に出る味)が美味しいと評価されること。
違法では無いが、香り、うま味を良くする添加物を加えている(ラベルに記載する必要なし)など、私たちが一口飲めばわかる反則(法に抵触しなければ良い)の様なものが堂々と市場には溢れています。
嗜好品です。ウマければ正義である現実。売れれば正しいとされる世界。
勿論、商売ですから売れなければ成り立たないことは理解しています。

このような現状から我々蔵人が造りたい、本来の酒、本物の酒、そんなものはただの自己満足に過ぎないと言われ、「そこそこ美味い」量産酒造りへとシフトさせられる現実。
自分の理想とするものが造れないこと、これが一番のストレスです。
自己満足できないものを何故売ることが出来るのか。私には分かりません。
データを確実に実行できる設備があれば、もう「蔵人」はいりません。
そのデータを残したのは私達蔵人です。

いつか、自分で蔵を造ることが目標です。難しい事ですが。
自分で納得のいく酒だけを造れる環境、それが今一番欲しいものであり、私の目標です。